写真月間のお話「ほんとうの嘘」

写真月間の写真にまつわるお話。
今週はショップスタッフいまいがお話させていただきます。
私は卉奏オンラインストアの製品写真などを撮っていますが、
今日は私個人の作品についてお話しますね。

私は人物写真をよく撮ります。
そんな作品のなかで、今年のはじめから撮っている「嘘の生活」というシリーズがあります。
普段一緒に暮らしているわけではない人を、一緒に生活しているように撮るというシリーズです。

もともと、お家でも外でもガッツリ「ポートレートを撮ります!」という撮影はあまりしていなくて、日常のような作品を撮ることが好きでした。

だけど、どんなに「生活している風」を装っても
撮影をしよう!と集まっている以上は本当の生活ではなくて。
そういう「嘘をついている」ということに対してぐるぐると考えてしまっていました。
嘘をつくって悪いことな気がするし、光の子は嘘をついてはいけないと思っていたし。

そんな風にぐるぐる考えながらなんとなく撮り続けていたのですが、
ある女の子を撮らせてもらった時に彼女は楽しそうにのびのび「嘘」をついてくれて、
私もそこに惹きこまれてどんどん写真を撮りました。

嘘の生活を過ごすなかで、私たちにしかわからない言語が生まれたのです。

その時に、嘘でもいいじゃないか!と思いました。
だって、映画も漫画も小説も物語は嘘ばっかり。
サプライズの時はみんながこぞって嘘をつくし。

いやいや、でも過ごした時間は本当なんです。
ごはんを食べてころころ笑い転げたり、思い付きでいきなり歌いだしたり。
たしかに私たちはそこで人生の中のほんの少しの間一緒に生きたんです。

その嘘の時間を選んだのは本当の私たちだから、全部がほんとうなんです。
ほんとうの嘘なのです。

だから、生活という設定が嘘かどうかは重要ではなくて。
その中で生まれるひそひそ話のような時間を撮りつづけたいと思っています。

あと、余談ですが、生活の写真を撮ろう!と言って集まって、嘘をつきまくって撮影をして、
その時間が終わったらお互いがお互いの全く知らない生活に戻っていくということが
なんだか儚くて切なくてたまらなく好きなのです。

不細工な部分もにきびも全部愛せてしまうくらいに親密だった時間の記憶はたしかにあるのに、
寝て起きたらきちんと仕事へ向かう電車に乗っている感じがデートの次の日みたいで。

ショップスタッフ いまい

協力:小林美咲・武内おと・宮内杏子・脇迫明日香