写真月間のお話「遺影」

今年の穏やかな春の或る日に、
大好きな祖父が彼の愛する妻に看取られ旅立った。

若い頃から登山と写真が好きだった祖父。
祖父の部屋には誇らしげに、
彼が撮影した雄大な自然の写真が飾られている。もう何十年も其処に飾られているので、
色褪せてしまっているものもあるけれど、
わたしはその写真がいっぱいの祖父の部屋の景色が好きだった。
嬉しそうに、その自然の中にいた時の話をしてくれる、そんな祖父が好きだった。

わたしは祖父とよく似ている。
融通がきかないところ、やいやい五月蝿いところ、すぐイライラするところ、
なんだかんだ言って家族のことが大好きなところ、写真が好きなところ。
わたしが使っている二眼レフのカメラは祖父から譲り受けたもの。

葬儀の準備の時、「遺影の写真どうしよう?」と母や祖母が探していた。
最近はほとんど写真を撮っていなかったけれど、
わたしが結婚してから、夫が毎年お正月に家族揃って集合写真を撮ってくれていたのでその中の1枚にすることに。
写真に写ることはあまり好きではなかった祖父だけど、その1枚は家族に囲まれて柔らかい表情。

葬儀に来てくださったたくさんの方が、
「いい写真ですね」「いいお顔をしてはるね」
と、言ってくださった。

祖母は「そうでしょう、いい顔写してもらったのよ。」と、泣きながら、笑った。

もし、自分が突然この世を去る時が来たら、
わたしの家族はどんな写真を選んでくれるのだろう。

もちろん、わたしはまだまだ長くこの世に居たいし、
これからやりたいこと経験したいことだってある。
かわいいおばあちゃんにもなりたい。
でも、今のわたしの遺影を遺しておきたい、と思った。

幸いわたしの夫は写真家としても活動している。
今のわたし。
お気に入りの洋服を身に纏って、
ばっちりお化粧をして。
いや、素顔がいいかな。うん、その時の気分次第で。
大切な人に遺してもらう遺影。
夫にしか撮れない写真で遺してもらいたい。

いつかその時が来たら、
「いい写真だね」って言ってもらいたいし、
(夫の方が長生きをしていたら)夫に、
「そうでしょう、僕が撮ったんですよ。」と誇らしげに言ってほしい。

だから、記念写真のように遺してもらおう。
そしていまを精いっぱい生きよう。
いつかそんな素敵な最期の時を迎えられるように。

それと同時に、今をもっと遺していきたいとも思った。

自分の心に残るもの、大切な人、大切なもの、なんとなく好きなもの、
ちゃんとしている時の夫、だらしない夫。
日々の愛おしい瞬間を遺していこう。

スマホでも、デジカメでも、フィルムでも。

ショップスタッフ 山田花央里