招待作家紹介

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「オールドレンズライフ」の監修、「オールドレンズレジェンド」などの数多くの書籍を手がけ、写真活動される澤村徹氏、
「snap!」の編集長鈴木文彦氏のおふたりを招待作家としてお招きしています。
そしてアクリュデザイナー シノハラトモユキ。
各ご紹介とともに、各種オールドレンズで撮影された写真と、それに寄せて頂いたコメントを併せてごらんくださいませ。
作品はクリックすると大きな画像でご覧いただけます。

写真家・ライター
澤村徹 Tetsu Sawamura


1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。1996年よりフリーライターとして独立。マウントアダプタを用いたオールドレンズ撮影、デジタルカメラのドレスアップ、デジタル赤外線写真など、個性派カメラホビーを提案。SILKYPIX、Lightroom、Digital Photo Professionalなど、RAW現像も得意とする。日本カメラ「レンズマニアックス」、デジカメWatch「デジカメドレスアップ主義」を連載。近著は玄光社「オールドレンズ・ライフVol.5」他。

http://metalmickey.jp/



澤村 徹 Old lens gallery



使用レンズ/設定

LZOS
Jupiter-9 85mmF2
α7S + Jupiter-9 85mmF2
絞り優先AE F2 1/80秒 +0.7EV ISO200 AWB RAW


昨今、オールドレンズを使ったポートレート撮影が人気だという。古くからのオールドレンズファンは、そのことにちょっとジェラシーをおぼえるかもしれない。その昔、オールドレンズと言えば路地裏や神社仏閣など、シックな被写体を撮る人が多かった。ところが最近は若い層がオールドレンズに興味を持ち、被写体にも変化が現れる。オールドレンズによるポートレートブームは、そうした現れのひとつだ。ここではロシア製ポートレートレンズを使い、ロシア系アメリカ人のモデルを撮影した。透明感のある肌が暖色を帯び、肌の色でレンズを選ぶという切り口もアリだろう。




使用レンズ/設定

Leitz
Super-Angulon-M 21mmF3.4
Leica M8 + Super-Angulon-M 21mmF3.4
絞り優先AE F5.6 1/1000秒 ISO1250 AWB RAW


スーパーアンギュロンはライカMマウントの名広角レンズだ。オールドレンズに興味のない人でもその名は耳にしたことがあるだろう。定評のあるシャープさに加え、やさしいフレアがオールドレンズらしさを引き立てる。ただし、デジタルカメラと相性がわるく、ボディを選ぶ点に注意が必要だ。まず、後玉が後方に飛び出しているため、ミラーレス機だと内部干渉しやすい。デジタルM型ライカには装着可能だが、フルサイズ機だと周辺部にマゼンタかぶりが発生する。こうしたことを踏まえると、ライカM8での撮影がお薦めだ。ライカM8なら内部干渉せず、APS-Hセンサーなので周辺マゼンタかぶりもない。ただし、そのライカM8でさえも後玉が露出計のセンサーを遮り、マニュアルモードでの撮影となる。スーパーアンギュロンはライカの銘玉であり、デジタルでは迷玉でもある。




使用レンズ/設定

Meyer Optik
Primoplan 58mmF1.9 V
α7S + Primoplan 58mmF1.9 V
絞り優先AE F5.6 1/3200秒 ISO100 AWB RAW


プリモプラン58ミリF1.9Vは近年急速の再評価が進んだレンズだ。メイヤーはオールドレンズをさんざん味わい尽くした人がたどり着くようなレンズメーカーだが、ミラーレス機の登場以降、オールドレンズファンの裾野が広がったのだろう。本レンズも瞬く間に高値安定して高級オールドレンズの仲間入りだ。無論、描写を見ると人気も頷ける。アンジェニューの暖色とゼプトンの透明感、それらを掛け合わせたような絵作りだ。オールドレンズに詳しい人ほど、このレンズのおもしろさが実感できるだろう。良くも悪くも玄人向けのオールドレンズである。




澤村さんは、アクリュで今年の初めに写真展「クラフトマンシップ」を開催しました。
カメラケース、レザーストラップ、ソフトレリーズ、マウントアダプターなど、カメラアクセサリー職人の姿をオールドレンズで捉えた「クラフトマンシップ」
オールドレンズの抒情的な写りが、彼らが背負うものまでも浮き彫りに。
職人のその背景にある感情や葛藤などの見えない部分が、じわじわとみる人の感情に重なってくる展示となりました。
その時の作家トークも併せてごらんください。
http://acru.jp/blog/information/27334


鈴木文彦
Suzuki Fumihiko (snap!)


東京都出身。フィルム写真専門誌「snap!」を創刊したのち、「フィルムカメラの教科書」「中判カメラの教科書」「チェキit!」「レンズの時間」「X-T1撮影スタイルBOOK」「オールドレンズの新しい教科書」など、趣味の写真にまつわるムック・書籍を多数企画・編集・執筆。また「カメラライフ」「カメラマガジン」「写ガール」などにCOエディターとして参加している。プライベートではフィルムカメラを愛用

http://snap-photobase.com/


鈴木 文彦 Old lens gallery



FUJICA GL690
FUJINON 100mmF3.5
Kodak PORTRA800







FUJICA GL690
FUJINON 100mmF3.5
Kodak PORTRA160







FUJIFILM GSW690
FUJINON 65mmF5.6
Kodak PORTRA800





ここ1年間で、2冊のオールドレンズ専門誌を立ち上げ、またX-T1、X-T10などデジカメ系書籍にてオールドレンズのページを作ってきました。
かなりの数のレンズを手にしてきて、心躍るレンズとも出会い、仕事場にはそれなりの本数のレンズがあります。レンズの些細な描写の違いに目を光らせそれを言葉にするという作業は、これからもこの活動は続けていきますが、根っこは単なるフィルム写真好きですので、撮ることだけに専念したい、という思いも心の中にあります。このバランスを崩さないようにし、オールドレンズはあくまで表現のための一端に過ぎないということは忘れないようにしていきたいのです。

今は自分自身にとって、まさにレンズと写真のバランスを取りたい時期。
ですから最近は、フジフイルムのGL690とGSW690という2機種を使い、好きな街に出掛けストレートにスナップ撮りをしています。



8枚しか撮れない6×9は自然と撮影に集中でき、フジノンのレンズはクセが少なく高画質で、遊び心はありません。でも、今はそれが心地良いのです。そして、持ち運びやらランニングコストは不便極まりないですが、高品質な描写を安い元手でゲットできるというのも、オールドレンズ&オールドカメラの醍醐味のひとつではないでしょうか。
2台合わせても、ミドルクラスのデジタルカメラのボディより安いくらいです。
GL690はレンズ交換式ですが、フジの6×9の伝統である100mmF3.5のみを付けています。GSW690は28mm相当の広角レンズが固定装着されています。
どちらも距離計式で、ライカをそのまま大きくしたかのようなルックスは、無骨で男心をくすぐります。

  写真は全て東京・福生で撮影しています。
米軍基地のある街で、基地の前の通りはアメリカンな雰囲気。「ハウス」も点在しています。小さな頃からアメリカ映画を観て育ち、アメリカ的風景を見るとなぜか懐かしさを感じる僕にとって、とても好きな街。でも、この感覚はきっと1960~70年代生まれの特徴なのかもしれませんね。いわゆる、「刷り込み」でしょうか。その気持ちに素直に撮りました。つまり、見たままですね。同様のテーマで、同じく米軍基地のある横須賀などにも、よく撮影に出掛けています。

このような撮影とは対照的に、身近な世界で撮ってはいるものの、もっと内面的なものを表現したいときは、クセの強いレンズを選ぶ傾向にあるなと感じています。
レンズのクセを武器にして、独特の世界を生むことができるからです。
いずれにしても、オールドレンズやフィルムカメラは、自分の写真にはなくてはならない存在。写真は結果が全てで、いいな、と思う写真を見て機材が気になることはないとはいっても、撮り手になったときのメンタル面に強く作用するところが、おもしろいし悩ましいですよね。


シノハラトモユキ
Tomoyuki Shinohara


アクリュ&篠原創意研究所のデザイナー。
日々の見過ごしがちな呼吸や光の粒の産み出す造形を探求しながらシャシンヅクリとモノヅクリに取り組んでいます。
最近では「オールドレンズ・ライフ Vol.5」「レンズの時間」「カメラ日和」などにオールドレンズで撮影した写真作品を取り上げていただいています。



シノハラトモユキ Old lens gallery



macro switar 50mm F1.8 x XT1


モルフォ蝶の構造色のアオとヒトは最近撮り続けているシリーズですが、
木々のざわめきが物質化したような独特なボケはこのレンズならでは。
フレアも出やすいレンズですが、即席手のひらフードで光を微調整しながら撮るとわずかな光の入り方でボケやフレアの色・かたちが様々に変化することに気づかせてくれます。




tegea9.8mm F1.8 x XT1


森とオールドレンズ。
tegea9.8mm はKinoptik 社のAPS-C フォーマットをカバーするシネレンズ。
9.8mmと超広角でありながら収差が少なく直線が歪まずに写ります。
また、最新の広角レンズは大変シャープでカリカリの描写のものが多いですが、開放では光がにじみノスタルジックな写りに。




Summilux 35mm F1.4 x LEICA M


アクリュアトリエの朝。
初期の球面ズミルックスは開放ではソフトフォーカスのような独特の写りをするクセ玉として有名ですが、
普段よりクセの強いレンズを使っている私には常用標準レンズ認定です(笑)
このレンズ、絞りこむとシャープになりますが、カリカリな描写とはまた違うナチュラルなシャープさ。
この写真は開放での撮影ですが、うっすらベールがかかったような沈んだトーンが光と影を特徴的に見せてくれます。

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