森からはじまった創作物

動物の皮はそのままでは腐敗したり硬化していきます。
これを植物のタンニンやクロム化合物などのなめし剤につけこむことで
劣化を防いだり風合いを与えモノとして使えるようにする=「皮→革に加工すること」を鞣し(なめし)と言います。
※他にも微生物や魚油、動物の脳しょうなどを使ったなめしも古くからあります。

アクリュのプロダクトでかかせない革の多くは植物の渋をつかったベジタブルタンニンなめしです。
製品になると実感していただきにくいですが
アクリュの革小物はいわば「動物と植物の力を借りて産まれた創作物」ということになります。

アクリュで使用している革のひとつに「栃木レザー」の革がありますが、
こちらのタンナーさんではピット製法と呼ばれる伝統的な革づくりをされています。
いくつもの濃度の異なる大きな水槽に張ったタンニン溶液に順番に皮をつけこみ、
じっくり時間をかけてタンニンを浸透させて仕上げていきます。
今はドラムを回転させて遠心力でなめすドラム製法が主流ですが、
皮に負担をかけにくいピット製法では堅牢な革づくりができると言われています。

タンニンなめしの起源となるものは人間がまだ文字を持たない先史時代からすでに
おこなわれていたようですのでその当時の史料はとんど残されていませんが、
その発見について興味深い話を聞きました。
はるか昔、森で亡くなった生き物が腐らず、きれいな状態のままで横たわっていたそうです。
不思議に思い近づくとその生き物は水たまりにつかったまま息を引き取っていました。
森にできた水たまりに樹皮や果実が落ちて積り、自然にできたタンニンの槽。
最後の力を振り絞ってたどりついた生き物がそこで森に還ったのかもしれませんね。

アクリュの創作に使っている革はもともと食用のためにいただいた動物の命です。
その命に感謝して余すことなくモノとしても遺したいという想いがモノヅクリの原点になっています。
生きていた動物ですから生前にできた「傷」や「シミ」はいたるところにありますが
アクリュでは耐久性に問題のない部位はなるべくそのまま省くことなく使っています。
(大きな傷はなるべく目立たない部位で使います。)
均一できれいなものと比べると「傷物」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
私はその生きていた証である傷をとても愛おしく美しいと感じます。
モノを買い替えることはお金に余裕があれば簡単なことなのかもしれませんが、
なるべくお使いいただいた革を残してのリペアをお受けしているのもそのような理由があります。

生き物が本来持っていた傷も、
暮らしの中で刻まれていく傷も、
ひとつとして同じものがない「美しい傷物」として愛していただけるとうれしく思います。

シノハラトモユキ