松元康明 寫眞展「 ghost sits in the memory 」開催中です

ただいまギャルリ・キソウでは 松元康明 寫眞展「 ghost sits in the memory 」が開催中です。

今展示では、なかなか見る機会のない、コロジオン湿板写真というガラスに写した作品を展示しています。
ガラスの板に標したモノクロームの記憶。
紙のプリントでは体感することのない、なんとも不思議な奥行き感のある写真です。

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ガラス湿板写真ってなに?
と、ギャラリーに来られた方からよく聞かれます。

一言でいえば、「ガラスに像を写した、古典技法の写真のこと。」
遠く、坂本龍馬がいた幕末時代。
フィルムが発明される前に使われていた技法のひとつと言われています。

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ガラス一枚一枚に、コロジオン溶液と呼ばれる無色透明の液体を塗布し
紫外線に反応する液体に浸します。
この状態が、今でいうところのフィルム。

これをカメラにセットし、
ピンホールカメラのような要領で一定時間撮影をします。

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撮影が済んだガラス板は、暗室作業に入ります。
現像、定着、水洗を丁寧に行って、
最後に仕上げでラベンダーの精油を使って表面をコーティング。

言葉で書くととてもシンプルな作業に感じますが
「湿板」と書くように、
表面が乾ききらないうちに、撮影、現像を行わなければなりません。
とてもとても忙しい作業です。

作業の途中に、ガラスが割れてしまったり
薬液がうまく塗布できずにムラが出来てしまったり(これが「ゴースト」のひとつになったりもします)
一枚が完成するまで、とても気の遠くなるような時間と集中力。

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今でこそ、デジタルカメラが主流になって
シャッターボタンを押せば、写真が撮れ、
ボタン一つで画像が消えたり、加工出来たりします。

それよりももっともっと手間のかかるこの技法。
一枚に注ぐ愛情は、まるで我が子を育てていくように深いように思います。

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展示してある作品は、全てオリジナル。
世界で今もこれからも、ひとつしか存在しない作品です。

こんなにも美しくて繊細な「写真」が
もう何百年も前に存在していたなんて。

今ではウェブで簡単に写真が見れる時代になりました。
でもこのガラス湿板写真は生で見ないと分からない、なんとも不思議な感動があります。

プリントではないからこその、艶やかさ。
平面なの?立体なの?
何も知らずに来たお客様が立体物と勘違いするほど。

ぜひ上から、下から、横からも。
いろんな角度から作品をご覧になってください。

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またこのガラス湿板写真をヴァンダイクプリントという古典技法を使って
一冊のポートフォリオをご用意して頂きました。

ガラス湿板写真とは違った、なんともノスタルジーな世界観。
まるで古い映画のワンシーンを切り取ったかのようです。

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このヴァンダイクプリントは、ネガを印画紙に直接密着させ
紫外線で焼く、いわゆる「お日様の写真」
紫外線が影響してくるため、
晴れの日と、曇りや雨の日とでは色の出方が全然違ってきます。
季節も変われば、時間によっても変わってくることを考えると
こちらも全く同じ作品になりません。

展示作品を再度ネガに起こす為に撮影をしていますが、
たんなる複写ではなく、これも一つ一つがオリジナルではないでしょうか。

ぜひお気に入りの一枚を見つけて、お部屋にも飾って頂ければと思います。

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標本箱のようなフレームに入った、宝物のおばけたち。
会期は長く、10/2(日)まで開催しております。

どうぞ何度も何度もゆっくりとご覧くださいませ。

大谷 美花

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松元康明 寫眞展「 ghost sits in the memory
2016.09.07(wed) – 10.02(sun)
open : 12:00 – 20:00(最終日は18:00まで)

〇作家
松元康明